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保育は20年後の日本を創る仕事。
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対談・インタビュー

男性保育者が活躍できる社会とは?(後編)

山本 慎介(社会福祉法人わかたけ会 理事長)
東京男性保育者連絡会事務局長として、男性保育者が集まれる場づくりや男性保育者を受け入れたい園へのサポートをおこなっている。自身が園長を務めるわかたけかなえ保育園(東京都板橋区)でも男性職員の育成やキャリア形成に力を入れており、20名の常勤保育士のうち5名が男性。
インタビュアー 柴田 小夜子(「ほいく男子会」広報)
大学卒業後、新卒で入社したキャリアフィールド株式会社にて、保育施設の採用コンサルティングを4年間経験後、産・育休を取得。2016年4月より復帰し、現在は1歳の娘を育てながら、保育施設の採用や運営のサポートを行なっている。

 

2大ハードルは、“保護者の理解”と“賃金”

柴田:「男性保育士受け入れたい気持ちはあるんだけど、保護者からの理解が得られなくて…」というお声が多かったんですが、そんなにも「男性保育士は嫌だ!」という保護者って多いものなんでしょうか?

山本:当園では開設当初から男性保育士がたくさんいるので保護者にとっても「いて当たり前」になっていると思います。それでも「男性の先生におむつを替えさせないでほしい」と言われたことはありますよ。

柴田:「男性には0歳児クラスの担任をさせない」という園も多いですよね。山本先生のところではどうされているんですか?

山本:保育士は専門職です。おむつを替えるという行為ひとつとっても、ただ作業として行っているわけではありません。便の様子はどうか、皮膚の疾患はないかなど、その子の健康状態のチェックにはおむつ替えは必要不可欠ですし、大切なスキンシップの一つでもあります。保育をする上で欠かせない仕事のひとつなんです。それを男性だからという理由で特定の保育士にさせないんだとしたら、それは保育にならないですよ。

柴田:病院で男性医師に子どもの裸を見せることは問題にならないのに、保育園や幼稚園でで男性保育者に裸を見せることは問題になる。私がほいく男子会の活動をしていて憤りを感じるのはその点なんですけど…

山本:憤っているんですか(笑)
「保護者が男性保育士を嫌がるのは偏見だ!」って言うのは、それも偏見だと思います。不安にさせるような事件が一部で起きているのも、それに伴って保護者が不安になっているのも、事実ですからね。だから僕は、男性保育士には「偏見は、あるよ」とハッキリ伝えています。それが事実ですから。

柴田:恣意的な報道も多いと思いますが、どうお考えですか?

山本:仕方ないですよ、人間ですから。漠然とした不安が偏見につながってしまうということは、受け止めなければいけません。その上で、僕たち保育施設の運営側ができることは、保護者の方としっかり向き合って、真摯に説明をし続けることだと思います。もちろん、職員教育を徹底しているということ前提ですが…。
「男性の先生におむつを替えさせないでほしい」と言われたときも、「性犯罪や一部の男性保育者が起こしてしまった事件の報道もあるので、不安になるのはわかります。しかし、専門職としての職務ですから外すことはできません。信頼を得られるように日々の保育に努めますので見ていてください」とお話をしました。

柴田:素晴らしいです。逃げずに向き合い続けることが、実は一番難しいですから。

女性なら少ない賃金でも良いって言ってるのと同じ!

柴田:男性保育士の受入れには2大ハードルがあると感じています。ひとつは今お話した保護者の理解。そしてもうひとつは賃金だと思うのですが、いかがお考えですか?

山本:それは僕も相談や質問を受けること多いんですが、「うちでは不足ないくらいの給与は出せていますよ」と答えています。これは男性だけでなく女性も同様ですが。
地方ですと、園に入ってくる補助金が少なかったり、子どもが減っていて毎年の園児数が安定しなかったり、どれだけ工夫をしたとしても十分な報酬を出すことなどできない園もあります。でも少なくとも東京23区内の園で「賃金が…」となっているようでは、“運営側の質の問題”としか言えません。
保育士・幼稚園教諭という職種自体がものすごく稼げるという職種ではありませんが、夫婦共働きを前提とすれば、結婚して子育てして生活をしていくのに不足しないだけの給与は普通に出せますね。こないだも、うちの男性保育士が「おかげさまでローン審査通りまして、一戸建て買えました!」って報告に来てくれましたよ。

柴田:それはうれしいですね!
最初の“男性らしさ”への固執の話じゃないですが、今の時代、特に都内では「男性が一人で稼いで家族を養う」という時代ではない。それこそが、まずは捨てなきゃいけない価値観なのかもしれませんね。施設側も、男性保育者側も。

山本:そうですね。「うちはそんなに給与が多く出せないから、男性に来てもらっても申し訳ない…」って言う園長先生もいますけど、まったくおかしな話ですよね。それって裏を返せば、「女性なら少ない賃金でもいい」ってことですか?と。

柴田:賃金の面でも“男性だから”とか“女性だから”ではなく、保育者全体の地位向上が課題なのかもしれないですね。

山本:でも、手放しで「保育士は大変な仕事なんだ!もっと地位向上を!」って言うこともなかなかできません。職員の質の向上に力を入れている園もありますが、そうでない園もけっこうありますよね。まずは専門性の確立。次に外部発信。保育士の地位向上はその先にしかないと思いますよ。

柴田:とても興味深いお話でした。「ほいく男子会プラス10%」の活動が、業界全体のベースアップに深くかかわっているんだということを再認識しました。私たちの取り組んでいかなければいけない課題は、すごく大きいものなんですね。

山本:そうですね。保育施設は外への発信は苦手なところも多いので、ぜひ力を貸してください。

柴田:頑張ります。本日は、ありがとうございました。

男性保育者が活躍できる社会とは?(前編)

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